‘Will you marry me?（私と結婚してくれませんか？）‘　さまざまなプロポーズの言葉があるものの、もっとも古典的であり、かつ、よく使われるこのセリフ。実はボストンにいると頻繁に出会います。といっても、私に向かって誰かが頻繁にプロポーズしてくれるわけではありません。

　それは、スポーツ観戦中の電光掲示版なのです。野球やバスケットの試合中、スタジアムには、大きな電光掲示板で試合の様子を映し出しますが、時折、こういったプロポーズの文字がでかでかと映し出されます。

　場内の観客の一人が前もって、このプロポーズを演出し、女性を試合に誘い、そして、皆の前でプロポーズするのです。画面には、男性が片ひざをつき指輪を差し出し、女性は喜びをあらわにし、そのプロポーズを受ける、といった当のカップル達が映り、『Conguratulation！』の文字がピカピカと映ります。そして、場内は大きな拍手につつまれるのです。

　つい先日、スタジアム以外で、こういった場面に遭遇しました。

　場所は、ボストン交響楽団ホール。２００４年のカウントダウンコンサートの会場です。大晦日の夜の恒例となっているこのコンサートは、夜１０時過ぎから始まり、コンサート会場の中央には、ダンス用のホールが設置されています。最初のうちは、おとなしく演奏を聞いているのですが、途中からは、楽団が演奏する中、きらびやかに着飾った男女（中には男男のカップルもあるのですが。）が踊り始めるダンスパーティーと化するのです。

通常は観客席ですが、この日はダンスホール。

　このパーティーの最中、突然、観客達の視線がダンスホールのある一点に注目し、大きな拍手が沸き起こりました。習いたてのダンスを必死になって踊っていた私には、最初何が起こったのかまったくわかりませんでした。周りに人に『いったい何が起こったの？』と尋ねると、どうも、プロポーズらしいという答え。

　ダンスの最中に、男性が女性に指輪を渡し、求婚。もちろん女性は、喜んでこの申し出を受け、周囲の観客達も拍手喝采です。カップルの周りをほかの観客達がぐるりと取り囲み、プロポーズが終わると、男性が女性の手を取り、華麗に踊りはじめました。まるで映画のワンシーンです。演奏中の曲が終わると、指揮者からもお祝いの言葉が送られました。

　こういった皆が見守る中、プロポーズを行うというのが、米国ではよくある求婚の方法だと、最近やっとわかってきました。

　先日、知り合いの女性が婚約したとの話をしていたときのことです。彼女の場合は、こうでした。

　金曜の夕方、もうあと少しで仕事が終わり週末になるというその時間に、男性が彼女の職場へ大きな花束をもってやってきました。彼女の職場の同僚が見守る中、彼は、彼女へ求婚し、そして、彼女はそのプロポーズを受けました。

　スタジアムやコンサートホールでの求婚は、映画のようなロマンチックな演出が好きな人達が、特別に行っているのかと思っていたのですが、これは、特別ではなく、場所はいろいろだけれども、多くのカップルが公の場所で求婚を行っているのです。

　米国では、女性が元気だ、というイメージから、女性が男性にプロポーズするのも普通なのかもしれないと、ぼんやり思っていた私にとって、皆が見守る中での男性からの求婚が、ポピュラーだという話はなんだか、意外な感じもします。

　しかし、やはり女性なら、こういったロマンチックな求婚にあこがれるのでしょう。これをお読みの独身男性諸君、花束を持って意中の彼女の職場へ押しかけてみてはいかがでしょうか？（成功しなくても、当方一切責任を持ちませんので悪しからず。）

　Sandy in Boston